2015年 10月22日  アキヨシミミナグサ − その2



【@今年5月27日に頂いた門田先生のメモ − 観察会参加者に後日配布しました】


         アキヨシミミナグサ Cerastium akiyoshiense Kadota〈秋吉耳菜草〉
                         (ナデシコ科 ミミナグサ属) 花期は 3〜10月。
        山口県美祢市美東町秋吉台の東麓に点在する銅山跡地に生える多年草。
        茎や花梗、萼片に腺毛があり粘る。
        花弁は狭倒卵形、長さ4.5-5.5mm、1/5〜1/4まで切れ込み、先端は鋭頭。
        葯は直径0.4mm。
        花弁と雄しべは無毛。

        本種はかって伊吹山固有のコバノミミナグサと同一の植物と考えられた。
        しかし、アキヨシミミナグサはコバノミミナグサに比べて、
        @花弁が倒卵形でより短く、
        A花弁の切れ込みがより浅く、萼片の先が鋭形で、
        B萼片がより短く、背軸側に長毛に加えて腺毛があり、
        C花梗にも腺毛があり、
        D刮ハがより短く、
        E葯がより小型である点で異なる。
        一方アキヨシミミナグサはホソバミミナグサとは、
        @花弁がより短く、
        A花柱がより短く、
        B苞が葉状になって、縁に膜状部を欠くことで区別される。
        アキヨシミミナグサの染色体数 2n=70 は
        ミミナグサ属の中でもこれまでに報告が極めて少ない。

【@最盛期のアキヨシミミナグサ】
14.6.7 撮影
                                 
【A門田先生と同行時に】
15.5.26 撮影

【Aを拡大しました】
15.5.26 撮影

【B花弁は倒卵形、長さ4.5-5.5mm、1/5〜1/4まで切れ込み、先端は鋭頭
14.4.1 撮影

【Bを拡大しました − 葯は直径0.4mm。花弁と雄しべは無毛
14.4.1 撮影

【C萼片の先が鋭形
14.6.7 撮影

【Cを拡大しました −茎や花梗、萼片に腺毛があり粘る
14.6.7 撮影
「苞が葉状になって、縁に膜状部を欠く」


【Dアキヨシミミナグサには無花枝がでます】
15.10. 撮影

【D無花枝】
14.8. 11 撮影

【Dを拡大しました】
14.8.11 撮影


  『秋吉台で出会った花 改訂版』 に寄せていただいた巻頭言の最後に書かれました。
  
     
      
アキヨシアザミと中沢妙子さん─改訂版出版に寄せて

                         国立科学博物館植物研究部 門田 裕一

 最後に一言、この植物図鑑には幾つかの宿題が含まれています。そのうちの一つは9ページ掲載の
コバノミミナグサです。伊吹山特産とされてきたコバノミミナグサが秋吉台にもあるというのです。私は両
方とも生きた状態で見ていますが、姿形だけではなく、生育状態も違っているように思えます。伊吹山は
私にとって少年時代に眺めて育った山です。その伊吹山の植物の正体を明らかにするためにも、近いう
ちにこの問題に決着を付けたいと思っています。

2012年10月、あいまいだったアキヨシアザミの詳細を示していただき、
2015年10月、アキヨシがつく2種目の植物、アキヨシミミナグサの新種発表。
微力ながらも門田先生の研究のお手伝いをしてきて、本当に嬉しいです。

また、今年5月27日の観察会で門田先生から『アキヨシミミナグサ』になることを教えていただきましたが、
参加者の方々は、「論文が発表されるまで文字では示さない」との門田先生との約束を守られました。
ありがとうございました。


※ 2013年10月から、DNA分類体系準拠の新科名を書いています

※ 日記の花期は、私が秋吉台で調べてきたものを使用しています。

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